睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
消化器・内科専門医が解説
寝ている間の「いびき」「無呼吸」——指摘されたことはありませんか?
「家族にいびきがうるさいと言われた」「昼間、急激な眠気に襲われる」「朝起きたとき、頭が痛い・熟睡感がない」
それは睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインかもしれません。
単なる「いびき」と放置すると、心臓や脳に大きな負担がかかります。
まずは簡単な検査でチェックしてみませんか?
- 自宅で簡易検査OK
- CPAP治療に対応
- 合併症もしっかり管理
- 睡眠の質を改善
💡 SASとは?
睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりする病気です。
「太った男性の病気」というイメージがあるかもしれませんが、成人男性の約20%、閉経後女性の約10%に中等症以上のSASが見られると推計されています。
特に日本人は欧米人に比べてあごが小さい(小顔の)人が多く、痩せている方や女性でも発症しやすいのが特徴です。
⚠️ こんな症状にご注意を
🌙 睡眠中に現れるサイン
☀️ 日中に出てくるサイン
✅ セルフチェック
睡眠時無呼吸症候群の可能性を簡易チェックできます。
⚠️ 放置してはいけない理由
SASを放置すると、睡眠中に酸素不足になり、全身に慢性的なダメージが蓄積していきます。
🔍 SASの原因
👆 タブを切り替えてご覧ください
⚖️ 肥満
体重が増えると、のどの内側や舌にも脂肪がつきます。この「見えない脂肪」が空気の通り道を圧迫し、寝ている間に気道を塞ぎやすくします。
- 体重が10%増えるとリスクが約6倍に上がります。
- 首回りの太さ(男性43cm以上・女性41cm以上)は特にリスクと関連しています。
※日本人は痩せていても骨格の理由で発症することがあります。
🦴 骨格の問題
日本人はあごが小さく口の中のスペースが狭いため、痩せていても舌が気道を塞ぎやすい特徴があります。
👤 加齢と性別
年齢とともにのどを支える筋肉が弱くなり、寝ている間に気道が塞がりやすくなります。
- 男性は女性の2〜3倍SASになりやすいとされています。
- 女性は閉経後、女性ホルモンの低下により男性と同程度の発症率になります。
- 女性のSASは「いびき」より「疲労感」「不眠」「頭痛」が目立ち、見逃されやすいのが特徴です。
🧬 遺伝
あごの大きさや気道の広さは親から受け継がれます。ご家族にいびきやSASの方がいる場合はリスクが高まります。
🍺 生活習慣
-
🍶アルコール
寝酒はのどの筋肉を過度に緩め、いびきや無呼吸を悪化させます。
-
🚬喫煙
喫煙者のSASリスクは約3倍。気道の慢性的な炎症が原因です。
-
🛏️仰向け寝
重力で舌が落ち込み、気道を塞ぎやすくなります。
-
💊一部の睡眠薬・鎮痛薬
のどの筋肉を緩めてSASを悪化させる恐れがあります。
🏥 その他の原因
-
🫧扁桃腺の肥大
お子様のSASで最も多い原因。大人でもリスクが上がります。
-
👃鼻づまり
鼻が通りにくいと口呼吸になり、SASリスクが約2倍になります。
-
🦋甲状腺の病気
甲状腺ホルモンが低下すると、のどの筋肉が弱まりSASの原因になることがあります。
🏥 診療の流れ
👨⚕️ 診察
いびきの状況や日中の眠気の程度、生活習慣、既往歴を問診し、全身状態を確認します。
🔬 検査
ご自宅で行える「簡易睡眠検査(アプノモニター)」を手配し、睡眠中の呼吸状態や血中酸素濃度を測定します。
📋 診断
検査結果と症状を総合的に判断し、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度を診断します。必要に応じて精密検査(PSG)を行います。
💊 治療
重症度に応じて、CPAP療法、マウスピースの作成依頼、または生活習慣の指導など、最適な治療を行います。
🔬 SASの検査
👆 他のタブをタップすると切り替わります
🏠 簡易検査
自宅で簡単当院で最も一般的な検査です。小型センサーをご自宅で装着していただきます。
検査のステップ
- 診察時に機器をお渡しし、使い方をご説明します
- 就寝前に指先と鼻の下にセンサーをつけます
- 普段通りに就寝します(痛み・違和感はほぼありません)
- 翌朝外し、後日の診察で結果をお伝えします
※睡眠中の血中酸素レベル、呼吸やいびきの状態が分かります。
👆 他のタブをタップすると切り替わります
🏥 精密検査
1泊入院簡易検査でより詳細なデータが必要な場合、連携医療機関で1泊の入院検査(PSG検査)を行います。
- 脳波:睡眠の深さを測定
- 呼吸:空気の流れや胸・お腹の動きを記録
- 心電図:心臓の動きを確認
- 血中酸素:指先で測定
- 筋電・眼球:レム睡眠や体の動きを確認
センサーを多数つけますが、痛みはなく、多くの方が普段通り眠れます。
※簡易検査で判断が難しい場合に行う、最も正確な標準検査です。
👆 他のタブをタップすると切り替わります
📊 重症度判定
1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)で判定します。
経過観察
生活改善・マウスピース
マウスピース・CPAP
CPAP療法推奨
⚠️ 重要
表は目安です。AHIが低くても、日中の強い眠気や高血圧などの合併症がある場合は、積極的な治療の対象となります。
💊 治療法
👆 他のタブをタップすると切り替わります
💊 CPAP療法
重症(AHI 20以上など)の方に最も推奨される治療法です。
寝ている間に鼻マスクから空気を送り込み、空気の圧力で気道を「支える」イメージです。
-
即効性
治療を始めたその日から、いびきが止まり、熟睡感が得られる方が多いです。
-
リスク低減
適切に使用することで、脳卒中や心筋梗塞のリスクが健康な人と同等まで下がることが証明されています。
👆 他のタブをタップすると切り替わります
🦷 マウスピース療法
下あごを数ミリ前に出した状態で固定する専用のマウスピースを装着し、物理的にのどのスペースを広げます。
-
対象
軽症〜中等症の方、CPAPがどうしても合わない方
-
メリット
小さくて持ち運びやすい、電源不要、音が出ない
-
作製の流れ
当院から提携歯科医院へ紹介 → 保険適用で作製(自己負担3割で1〜2万円程度)
👆 他のタブをタップすると切り替わります
🏃 生活習慣の改善
すべての治療の基本です。根本的な解決を目指しましょう。
-
減量
現体重の5〜10%減量するだけでも、のどの脂肪が減り、SASが改善することがあります。
-
横向き寝
仰向けよりも舌が落ち込みにくくなります。抱き枕を活用するのも有効です。
-
お酒を控える
アルコールは筋肉を緩めるため、就寝前の寝酒は控えましょう。特に治療中は厳禁です。
🩺 まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、放っておくと怖い病気ですが、「適切に治療さえすれば、健康な人と変わらない生活が送れる病気」でもあります。
「最近、疲れが取れない」「家族にいびきを指摘された」——そんな小さなサインは、体からのSOSです。
当院では、簡易検査から治療まで、患者さんのライフスタイルに合わせてサポートいたします。池尻大橋から徒歩3分の当院へ、まずはお気軽にご相談ください。
❓ よくあるご質問
肥満が主原因であれば、減量で劇的に改善することがあります。しかし、日本人に多い「骨格(あごが小さい)」が原因の場合は、痩せていても無呼吸が残ることが多いため、治療の継続が必要です。
小児のSAS(扁桃肥大などが原因)では手術が有効ですが、大人の場合はのどの奥全体の構造が原因であることが多く、手術(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術など)だけで完治するケースは限られます。そのため、第一選択はCPAP治療となります。
正しい手順で少しずつ慣れていけば、ほとんどの方が継続できます。
- 日中にマスクだけ装着:空気を送らず、テレビを見ながら10〜15分。顔への感触に慣れることが目的です。
- 空気を送りながら短時間装着:「ランプ機能」(圧力をゆっくり上げる機能)を使えば、いきなり強い風が来ることはありません。
- 昼寝で試してみる:短い昼寝(30分〜1時間)で成功体験を積みます。
- 夜の就寝で使い始める:最初は途中で外しても問題ありません。つけた時間を少しずつ延ばしていきましょう。
※目標は1晩4時間以上の装着です。4時間以上使用すると、日中の眠気改善・血圧低下・生活の質向上などの効果が実証されています。
視力が悪い方の「眼鏡」と同じとお考えください。「かけている時」に効果を発揮し、良い睡眠を守ってくれます。
将来的に減量などで無呼吸が消失すれば、卒業(治療終了)できることもあります。
マスクの種類やサイズの変更で解決できることがほとんどです。CPAPのマスクには主に3つのタイプがあります。
- 鼻マスク(ネーザルマスク):鼻全体を覆うタイプ。最も一般的です。
- 鼻ピロー(ネーザルピロー):鼻の穴に軽く差し込むだけ。顔への圧迫感が最も少なく、閉所恐怖感のある方に向いています。
- フルフェイスマスク:鼻と口を覆うタイプ。口が開いてしまう方に適しています。
当院では、患者さんにマスクを実際に試着していただき、ご自身で一番フィットするものを選んでいただいています。「痛い」「跡がつく」場合はベルトの締め具合の調整だけで改善することも多いです。どうしても合わない場合は、遠慮なく通院時にご相談ください。
最近の機器には「ランプ機能」(低い圧力からゆっくり上げる機能)や「呼気減圧機能」(息を吐く時だけ圧力を下げる機能)があります。これらの設定を調整するだけで楽になることが多いです。
それでも辛い場合は、オートCPAP(自動で圧力を調節してくれる機器)への変更も可能です。お気軽にご相談ください。
CPAPは「どのくらいの強さで空気を送るか(圧力設定)」がとても重要です。圧力が低すぎると無呼吸が止まらず、高すぎると息苦しくなります。最適な圧力は、一人ひとり異なりますので、以下の方法で慎重に決定します。
- オートCPAP(自動調整型):最も一般的な方法です。寝ている間のいびきや無呼吸を機器が自動で検知し、必要な分だけ圧力を自動調整します。1〜2週間のデータをもとに最適な圧力を決定します。
- 入院検査(PSG)による設定:より精密な設定が必要な場合は、睡眠検査入院で技師がリアルタイムに圧力を調整し、最小の有効圧力を見つけます。
- 導入後も定期的に調整:体重の増減や体調の変化でも最適な圧力は変わります。月1回の通院でデータをもとに微調整しています。
アレルギー性鼻炎などで鼻が詰まっているとCPAPが使いにくくなるため、ステロイド点鼻薬や血管収縮薬を用いて鼻の通りを良くし、CPAPの治療効果を高めることがあります。
鼻づまりが強い方でも、お薬で改善できるケースがほとんどですので、お気軽にご相談ください。
CPAPから送られる空気で鼻の粘膜が乾燥することがあります。対処法としては:
- 加温加湿器:ほとんどの機器に内蔵されています。設定を上げることで改善します。
- 点鼻薬:鼻づまりがひどい場合は、ステロイド点鼻薬などの併用が有効です。
- マスクの変更:口が開いて空気が漏れると乾燥が悪化しますので、顎ストラップの追加やフルフェイスマスクへの変更も検討します。
まずはCPAPの使用状況を確認させてください。1晩の装着時間が4時間未満だと、十分な効果が得られません。
十分な時間使用しているのに眠気が残る場合は、別の原因(不眠症の合併、睡眠時間の不足、他の睡眠障害など)の可能性があります。データを確認した上で、次のステップを一緒に考えましょう。
保険適用(3割負担)の場合、毎月の診察代と機器のレンタル料を含めて、月額4,500円〜5,000円程度です。
この費用で、将来の脳卒中や心臓病のリスクを下げ、毎日のパフォーマンスが上がると考えれば、決して高い投資ではありません。
最新のCPAP機器は非常に静かで、図書館の中(約25〜30デシベル)と同程度の音しか出ません。むしろ、「ガーガー」という激しいいびきがピタッと止まるため、「家族も静かに眠れるようになった」と喜ばれることがほとんどです。
ほとんどの機器は小型・軽量化されており、専用のキャリングケースに入れて持ち運ぶことができます。コンセントがあればホテル等でも通常通り使用できます。海外出張の場合は、変圧器が必要かどうか事前にご確認ください。
参考文献
- 日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
- 日本循環器学会 睡眠時無呼吸症候群の循環器病学におけるガイドライン(JCS 2023)
- Young T, Palta M, Dempsey J, et al. The occurrence of sleep-disordered breathing among middle-aged adults. N Engl J Med 1993; 328:1230.
- Peppard PE, Young T, Palta M, et al. Longitudinal study of moderate weight change and sleep-disordered breathing. JAMA 2000; 284:3015.
- Peppard PE, Young T, Barnet JH, et al. Increased prevalence of sleep-disordered breathing in adults. Am J Epidemiol 2013; 177:1006.
- Marin JM, Carrizo SJ, Vicente E, et al. Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study. Lancet 2005; 365:1046.
- Weaver TE, Maislin G, Dinges DF, et al. Relationship between hours of CPAP use and achieving normal levels of sleepiness and daily functioning. Sleep 2007; 30:711.
- Patil SP, Ayappa IA, Caples SM, et al. Treatment of adult obstructive sleep apnea with positive airway pressure: An American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med 2019; 15:335.
- Benjafield AV, Ayas NT, Eastwood PR, et al. Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis. Lancet Respir Med 2019; 7:687.
- Wetter DW, Young TB, Bidwell TR, et al. Smoking as a risk factor for sleep-disordered breathing. Arch Intern Med 1994; 154:2219.
- Young T, Finn L, Kim H. Nasal obstruction as a risk factor for sleep-disordered breathing. J Allergy Clin Immunol 1997; 99:S757.
- Chung F, Yegneswaran B, Liao P, et al. STOP questionnaire: a tool to screen patients for obstructive sleep apnea. Anesthesiology 2008; 108:812.
- Chung F, Abdullah HR, Liao P. STOP-Bang Questionnaire: A Practical Approach to Screening for Obstructive Sleep Apnea. Chest 2016; 149:631.
✍️ この記事を書いた人
古畑 司(ふるはた つかさ)
保有資格