機能性ディスペプシアについて

機能性ディスペプシア(FD)は、胃カメラで異常がないにもかかわらず慢性的な胃の不調が続く疾患です。当院では専門医が丁寧な問診と内視鏡検査で的確な診断を行い、最新のガイドラインに基づいた治療をご提案します

機能性ディスペプシア(FD)

専門医による除外診断・症状緩和・生活の質(QOL)改善

「胃カメラでは異常がないと言われたのに、胃が痛い」「少し食べただけでお腹がいっぱいになる」…そのつらい胃の不調、ただの胃弱や神経性胃炎ではなく「機能性ディスペプシア(FD)」という病気かもしれません。

機能性ディスペプシアは、胃がんや胃潰瘍などの目に見える異常がないにもかかわらず、胃の働き(機能)が悪くなることで慢性的な症状が現れる疾患です。当院では、内科・消化器専門医が丁寧な問診と内視鏡検査による的確な診断を行い、最新のガイドラインに基づいた適切な治療をご提案いたします。

  • 👨‍⚕️ 専門医
  • 🔬 除外診断
  • 💊 症状緩和
  • 😊 QOL改善

🦠 機能性ディスペプシア(FD)とは?

胃の粘膜に器質的(見た目)な異常が認められないにもかかわらず、胃もたれや早期満腹感、心窩部痛(みぞおちの痛み)などの不快な症状が慢性的に続く病気です。

主に以下の要因が複雑に絡み合って起こる多因子疾患と考えられています。

  • 🔄 胃の運動機能障害
  • 知覚過敏
  • 😰 ストレス

🤒 症状

主に以下の2つのタイプ(またはその混合)に分類されます。

😫
胃もたれ・早期満腹感 食後愁訴症候群(PDS)

食後のもたれ、少しで満腹になる症状が主体。

みぞおちの痛み・灼熱感 心窩部痛症候群(EPS)

食事に関係なく、みぞおちが痛む、焼ける感覚。

⚠️ 危険なサインの目安

※下記のような症状が一つでも当てはまる場合は、速やかに消化器内科を受診してください。

  • 📉 ダイエットをしていないのに、6ヶ月で3kg以上、または体重の5%以上減少した。
  • 🩸 吐血したり、黒い便(タール便)が出たりしたことがある。
  • 🍽️ 食べ物や飲み物が、のどや胸につかえる感じがする。
  • 🤢 食べたものを繰り返し嘔吐してしまう。
  • 💥 激しい痛みが30分以上続いたり、背中に痛みが抜けるような感覚がある。
  • 👨‍👩‍👧 50歳以上で初めて症状が出た、または家族に胃がんなどの既往がある。

📋 FD診断チェック

機能性ディスペプシア(FD)は、胃カメラで異常がないにもかかわらず、胃の不快な症状が続く病気です。8つの質問で、FDの可能性をチェックできます。

質問 1 / 8

📚 Gastroenterology 2016; 150: 1380–1392.

⚠️ ご注意

このチェックツールは診断の参考としてご利用ください。正確な診断には、消化器内科専門医の診察が必要です。

🏥 診療の流れ

機能性ディスペプシアは「除外診断」が基本です。まず器質的な病気がないことを確認してから、診断・治療を行います。

STEP 1

👨‍⚕️ 診察・問診

症状の内容、食事との関係、ストレス状況などを詳しくお聞きします。アラームサインの有無も確認します。

STEP 2

🩸 血液検査・ピロリ検査

貧血、炎症反応、肝臓・腎臓機能、糖尿病・甲状腺疾患の有無を確認します。

ピロリ菌陽性で除菌後に症状が治れば「H. pylori関連ディスペプシア」と診断されます。

STEP 3

🔬 画像検査

  • 📋 レントゲン:ガスのたまりや便秘の有無を確認
  • 🖥️ 腹部超音波・CT:膵臓・胆嚢・肝臓の病気を確認

📷 内視鏡検査

  • 🔬
    胃カメラ

    癌や潰瘍がないか直接確認します。確定診断に不可欠です。

  • 🔎
    大腸カメラ

    便通異常や血便、体重減少を伴う場合、IBSの合併や大腸がん除外のために行います。

STEP 4

治療開始

器質的疾患がないことを確認後、機能性ディスペプシアと診断し、お一人おひとりに合わせた治療を開始します。

💊 機能性ディスペプシア(FD)の治療

「症状の改善と生活の質(QOL)の向上」を目標に、症状のタイプに合わせて適切な治療を選択します。

治療は、食事・生活習慣の改善から開始し、改善が不十分な場合に薬物療法へとステップアップしていきます。

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🍽️ 食事・生活療法

軽症の場合はこれだけで症状が改善することもあります。まずは「土台作り」から始めましょう。

🥗 食事療法

🍳 高脂肪食を控える

脂肪は胃の排出を遅らせ、胃の感覚を過敏にさせます。揚げ物、霜降り肉などは控えめに。

🍚 少量頻回食

胃が十分に広がらないため、「分割食」や「腹八分目」が有効です。

🌶️ 刺激物を避ける

唐辛子、アルコール、カフェインなどが症状を悪化させる場合があります。

🏃 生活習慣の改善

🚭 禁煙

喫煙者は機能性ディスペプシアのリスクが約1.5倍高まります。

😴 睡眠と運動

睡眠障害は症状悪化に関連します。適度な運動で自律神経を整えましょう。

1️⃣ 第一選択薬

機能性ディスペプシア(FD)は症状によって「胃もたれ型(PDS)」「痛み型(EPS)」に分けられ、それぞれに適した薬を選択します。

😮‍💨 胃もたれ・早期満腹感が強い場合(PDS)

胃の動きが悪くなったり、食後に胃がうまく広がらなかったりすることが主な原因です。

第一選択
💊 アコチアミド(アコファイド)

胃もたれ・早期満腹感を改善する薬で、この症状がある方にまず処方されます。

😣 みぞおちの痛み・灼熱感が強い場合(EPS)

胃酸の刺激に対して知覚過敏になっていることが主な原因です。

第一選択
💊 PPI(プロトンポンプ阻害薬)

胃酸を強力に抑制。EPS(痛み型)に4〜8週間試します。

💊 H2ブロッカー / P-CAB

PPIと同様に痛みに有効。P-CAB(タケキャブ等)は新しい酸抑制薬です。

2️⃣ 第二選択薬

標準治療で効果が不十分な場合、以下の薬を追加・併用します。

🧠 抗うつ薬

胃と脳は自律神経でつながっているため、精神科の薬を「低用量」で使用することがあります。

最も推奨
💊 三環系抗うつ薬(TCA)

FD治療において最も推奨。低用量で内臓痛の過敏さを抑えます。

体重減少に
💊 ミルタザピン(NaSSA)

体重減少・早期満腹感を伴う方に有効。食欲増進効果あり。

💊 抗不安薬・その他

💊 タンドスピロン(セディール)

消化器症状を軽減。依存性の心配が少ないのが特徴。

注意
💊 スルピリド(ドグマチール)

抗うつ作用と胃の血流・運動改善作用を併せ持ちます。

※長期使用によるホルモンへの影響や震えに注意。

非推奨
💊 ベンゾジアゼピン系抗不安薬

FDに対する十分なエビデンスはありません。

※依存性リスクがあるため漫然とした使用は避けるべき。

🌿 漢方薬

漢方薬は西洋薬と併用でき、副作用も比較的少ないのが特徴です。症状に合わせて選択します。

最も推奨される漢方薬

第一選択
🍃 六君子湯(リックンシトウ)

胃の働き(排出・貯留)を助け、食欲ホルモン「グレリン」を増やして食欲不振を改善します。

こんな方に:胃もたれ、早期満腹感、食欲不振、不安感がある方

🍃 その他の漢方薬

🍃 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)

喉のつかえ感(ヒステリー球)や不安感が強い場合に有効。

こんな方に:喉に何か詰まった感じがする、気分がふさぐ方

🍃 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)

みぞおちのつかえや下痢傾向がある場合に処方。

こんな方に:みぞおちがつかえる、お腹がゴロゴロする方

💡 一人で抱え込まないで

古畑病院 外観

機能性ディスペプシアは、検査で異常が認められなくても症状が現れる疾患です。

当院では消化器専門医が丁寧に診察し、胃カメラで他の病気を除外したうえで、お一人おひとりの症状に合わせた治療をご提案いたします。

池尻大橋駅から徒歩3分、渋谷から一駅。三軒茶屋・中目黒からもアクセス良好です。胃の不調でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。スタッフ一同、心よりお待ちしております。

よくあるご質問

🏥 機能性ディスペプシア(FD)について

A

胃の痛みや胃もたれなどの不快な症状が慢性的に続いているにもかかわらず、内視鏡検査などを行っても、胃潰瘍や胃がんといった「症状の原因となる目に見える異常」が見つからない病気です。

A

主に「食後の胃もたれ」「早期満腹感(すぐお腹いっぱいになる)」「心窩部痛(みぞおちの痛み)」「心窩部灼熱感(みぞおちが熱い)」の4つが特徴的です。

A

胃がうまく広がらない「運動機能異常」、胃が敏感になる「内臓知覚過敏」、ストレスなどが影響する「脳腸相関」、感染後の微小な炎症などが複雑に絡み合って起こると考えられています。

A

はい。FDと診断される前に必ずピロリ菌検査を行います。陽性で除菌によって症状が改善すれば「H. pylori関連ディスペプシア」と診断されます。

A

ピロリ菌検査は必須に近く、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)も推奨されます。特に体重減少などの警告徴候がある場合や高齢者の場合は胃カメラが必須です。

A

高脂肪食(揚げ物など)を控える、腹八分目にする、よく噛む、規則正しい生活、十分な睡眠などが推奨されます。

A

胃酸を抑える薬(PPIなど)、胃の動きを良くする薬(アコチアミド)、漢方薬(六君子湯)などが第一選択です。効果不十分な場合は抗うつ薬などが検討されることもあります。

A

命に関わる病気ではありませんが、良くなったり悪くなったりを繰り返すことがあります。症状と上手く付き合いながら生活の質(QOL)を上げることが目標です。

A

はい。胃食道逆流症(GERD)や過敏性腸症候群(IBS)と合併することがよくあります。

🧠 心療内科との連携について

A

決して「気のせい」や「精神病」だからではありません。脳と胃腸は密接につながっており(脳腸相関)、脳のストレス反応を和らげることが胃腸の「痛み」や「動き」の改善に直接役立つためです。

悪循環の遮断:ストレス→胃腸不調→さらなるストレスという悪循環を断ちます。

痛み止め効果:抗うつ薬などは低用量で「内臓の痛み止め」として働きます。

心理療法:認知行動療法などが有効な場合があります。

📊 3つの病気の違いについて

A

いずれも検査で異常がないのにつらい症状がある病気ですが、場所と症状で区別します。

  • 機能性ディスペプシア(FD)

    胃もたれ、早期満腹感、みぞおちの痛みが特徴です。

  • 過敏性腸症候群(IBS)

    腹痛、便秘、下痢が特徴です。排便で痛みが和らぐことがあります。

  • 非びらん性胃食道逆流症(NERD)

    胸焼け、酸っぱいものが上がってくる症状が特徴です。

A

はい、機能性ディスペプシア(FD)、過敏性腸症候群(IBS)、非びらん性胃食道逆流症(NERD)は別の病気として定義されていますが、実際にはひとりの患者さんが複数の病気を併せ持っていることがよくあります。

  • 🔄

    機能性ディスペプシア(FD)と過敏性腸症候群(IBS)

    機能性ディスペプシア(FD)の患者さんの約40〜60%が過敏性腸症候群(IBS)も持っているといわれています。

  • 🔄

    機能性ディスペプシア(FD)と非びらん性胃食道逆流症(NERD)

    機能性ディスペプシア(FD)の患者さんにおいて非びらん性胃食道逆流症(NERD)を併発している割合も高く、日本では約47%に達するという報告もあります。

  • 💡

    なぜ合併しやすいのか

    胃、腸、食道は連続した消化管であり、「知覚過敏」や「運動機能の異常」、「ストレス(脳腸相関)」といった根本的な原因が共通しているため、複数の場所で不調が出やすいと考えられています。

参考文献

  1. 日本消化器病学会「機能性ディスペプシア(FD)診療ガイドライン2021 改訂第2版」
  2. Stanghellini V, et al. Gastroenterology. 2016;150:1380–1392.
  3. Matsueda K, et al. Gut. 2012;61:821–828.
  4. Tominaga K, et al. Neurogastroenterol Motil. 2018;30:e13319.
  5. Sugano K, et al. Gut. 2015;64:1353–1367.

✍️ この記事を書いた人

古畑 司 - 消化器病専門医・内視鏡専門医
古畑 司
(ふるはた つかさ)
保有資格
消化器病専門医 内視鏡専門医 総合内科専門医 肝臓専門医
消化器病専門医、内視鏡専門医に加え、総合内科専門医、肝臓専門医としての知見も活かし、患者さんの腹痛の原因を専門家として「的確に診断・治療」することに尽力しております。