専門医が教える!インフルエンザ予防ガイド
専門医が教える!
インフルエンザ予防ガイド
正しい予防策で感染リスクを大幅に減らす
インフルエンザは、適切な予防策を講じることで感染リスクを大幅に減らすことができます。主な感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」の2つ。それぞれの経路を遮断することが予防の基本です。
当院ではインフルエンザワクチン接種はもちろん、濃厚接触後の抗インフルエンザ薬の予防投与にも対応しております。ご家族や職場で感染者が出た場合も、お早めにご相談ください。
- ワクチン接種
- 手洗い・マスク
- 免疫ケア
- 予防投与
🦠 インフルエンザとは?
インフルエンザウイルスに感染することによって起こる気道感染症です。一般的な「風邪」がのどの痛みや鼻水から緩やかに始まるのに対し、インフルエンザはウイルスに感染してから1〜3日の潜伏期間を経て、突然の高熱や全身の倦怠感から始まるのが特徴です。
主にA型とB型が季節性に流行し、大人が感染すると仕事や家庭生活に大きな支障をきたすだけでなく、高齢者や持病のある方へ感染させてしまうリスクもあります。
💉 最も効果的な予防法:ワクチン接種
インフルエンザワクチンは、感染対策の要です。特に高齢者や基礎疾患のある方にとって、命を守るための重要な手段となります。
💉 ワクチンの種類
現在、日本国内では主に2種類のワクチンが使用可能です。
1 不活化ワクチン(皮下注射)
これまで一般的に使用されてきた、最もポピュラーなワクチンです。
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対象 生後6ヶ月以上の全ての方(妊婦、免疫不全の方も可)
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特徴 ウイルスの病原性をなくし、免疫を作る成分だけを抽出したもの。接種してもインフルエンザを発症することはありません。
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接種回数 13歳以上は通常1回。
2 フルミスト点鼻液
2024年から日本でも本格的に導入された、鼻の中に噴霧するタイプの新しいワクチンです。
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対象 2歳〜19歳(※病院によっては成人への接種も相談可能な場合がありますが、基本的には小児・若年者向けです)
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特徴 弱毒化した生きたウイルスを使用するため、鼻の粘膜に直接免疫(IgA抗体)を作り、ウイルス侵入そのものをブロックする効果が期待されます。注射の痛みがありません。
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注意点 生ワクチンのため、接種後に軽い風邪症状が出ることがあります(約1.8%でインフルエンザ様症状の発症あり)。妊婦や免疫不全の方は接種できません。
🛡️ ワクチンの効果
ワクチンには主に2つの効果が期待できます。
発病の予防
インフルエンザの発症を一定程度抑える効果があります。
- 効果:流行しているウイルスの型とワクチンの型が一致した場合、高齢者福祉施設に入所している高齢者において34〜55%の発病を阻止したという報告があります。
- 注意点:「打ってもかかることがある」のは事実ですが、かかりにくくする効果は認められています。
重症化の予防最も重要
もし発症してしまった場合でも、肺炎や脳症などの重篤な合併症を防ぎ、死亡リスクを下げる効果があります。
- 効果:高齢者福祉施設に入所している高齢者において、82%の死亡を阻止する効果があったとされています。
📅 接種のタイミングと回数
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推奨時期 流行が本格化する前の10月〜12月中旬までに接種を完了することが望ましいです。
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効果の持続期間 接種後約2週間で効果が現れ、約5ヶ月間持続します。
🛡️ 感染経路を知って防ぐ
インフルエンザの主な感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」です。それぞれの経路を遮断することが予防の基本です。
💨 飛沫感染の予防
感染者の咳やくしゃみによる飛沫(ウイルスを含んだしぶき)を吸い込むことで感染します。
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マスクの着用 人混みや換気の悪い場所では、不織布マスクを隙間なく着用しましょう。
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咳エチケット 咳やくしゃみをする際は、ティッシュや袖の内側で口と鼻を覆い、周囲への飛散を防ぎましょう。
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ソーシャルディスタンス 可能であれば、人との距離(約2m)を保つことで飛沫を浴びるリスクを減らせます。
🖐️ 接触感染の予防
ウイルスが付着した手で口や鼻、目などを触ることで感染します。ウイルスは、ドアノブ、つり革、スイッチなどに数時間から数日間生存することがあります。
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手洗い・手指消毒 帰宅時、食事前、トイレの後など、こまめに石鹸と流水で手を洗いましょう。アルコール消毒液も有効です。指先、爪の間、手首まで丁寧に洗うことがポイントです。
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顔を触らない 無意識に顔を触る癖に注意しましょう。特に目や鼻の粘膜はウイルスの侵入口となりやすいです。
💡 正しい手洗いの方法
石鹸を使い、手のひら・手の甲・指の間・爪の間・手首まで、最低20秒間かけて丁寧に洗いましょう。
🚨 濃厚接触後の緊急予防
家族や同僚がインフルエンザに感染し、濃厚接触してしまった場合、発症を防ぐための医学的な手段として抗インフルエンザ薬の予防投与があります。これは、治療用の薬を「発症する前」に服用・吸入することで、ウイルスの増殖を抑え、発症を食い止める方法です。
👤 対象となる方
医学的に推奨されるのは「重症化リスクが高い方」ですが、受験や仕事の都合などで希望される方にも処方されることがあります。
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ハイリスク群 65歳以上の高齢者、基礎疾患(糖尿病、心臓病、呼吸器疾患、腎臓病など)がある方、免疫機能が低下している方。
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社会的適応 受験生、重要な仕事を控えている方、医療・介護従事者など。
⏰ 実施のタイミング
感染者と最後に接触してから48時間以内に投与を開始する必要があります。
※48時間を過ぎるとウイルスが増殖してしまっており、予防効果が著しく低下するため推奨されません。
💊 使用される主な薬剤と飲み方
治療用とは用法・用量が異なる場合があります。医師の指示に従ってください。
最も標準的。1日1回を7〜10日間服用します。カプセルとドライシロップがあります。
1回吸入するだけで完了するため、飲み忘れがありません。10歳以上は治療時と同じ量(2容器)を吸入します。
📊 効果と限界
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発症阻止率 家庭内接触後の発症リスクを70〜90%低減できるとされています。
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注意点 薬の効果は「服用している期間(または薬効が続く期間)」に限られます。投与期間終了後に再度ウイルスに暴露すれば感染する可能性があります。
💰 費用について
予防投与は病気の治療ではないため、日本の公的医療保険は適用されず全額自費(自由診療)となります。
🌿 日常生活での免疫ケア
健康的な生活習慣は、体の免疫機能を維持し、ウイルスに対する抵抗力を高めます。
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適度な湿度の保持 空気が乾燥すると、喉の粘膜の防御機能が低下します。加湿器などを使用し、室内の湿度を50〜60%に保つようにしましょう。
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十分な休養と睡眠 睡眠不足は免疫力を低下させます。質の良い睡眠を心がけましょう。
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バランスの取れた食事 免疫細胞の材料となるタンパク質や、ビタミン(特にビタミンC、D、A)、ミネラルをバランスよく摂取しましょう。
🏥 重症化を防ぐために
インフルエンザの予防は、「ワクチン接種」を基礎とし、「手洗い・マスク」などの日常的な対策と、「規則正しい生活」による免疫ケアを組み合わせることで、より高い効果を発揮します。万が一、濃厚接触してしまった場合は、「予防投与」という選択肢があることも知っておいてください。
ご自身の健康を守るだけでなく、周囲の大切な人へ感染させないためにも、正しい予防策を実践しましょう。
❓ よくあるご質問
予防投与について
「抗インフルエンザ薬の予防投与」が最も確実です。
医学的に見て、現時点で最も発症阻止率が高い方法は、インフルエンザ治療薬(タミフル、イナビルなど)を発症する前に服用することです。家庭内接触後の発症リスクを70〜90%低減させると報告されています。
最終接触から「48時間以内」がタイムリミットです。
ウイルスが増殖しきる前に叩く必要があるため、早ければ早いほど効果的です。48時間を過ぎると予防効果は著しく低下しますので、迷っている時間はありません。直ちに医療機関へ相談してください。
いいえ、感染対策は必須です。
予防薬は体内でウイルスの増殖を抑えるものですが、新たに体に入ってくるウイルスをブロックするものではありません。感染者との部屋を分ける(隔離)、家の中でもマスク着用、こまめな換気と手洗いを徹底し、ウイルスへの暴露量(浴びる量)を物理的に減らす努力を併用することで、予防成功率は格段に高まります。
📚 参考文献
- Uyeki TM, et al. Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America: 2018 Update on Diagnosis, Treatment, Chemoprophylaxis, and Institutional Outbreak Management of Seasonal Influenza. Clin Infect Dis. 2019;68(6):e1-e47.
- Dobson J, et al. Oseltamivir treatment for influenza in adults: a meta-analysis of randomised controlled trials. Lancet. 2015;385(9979):1729-1737.
- Hayden FG, et al. Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents. N Engl J Med. 2018;379(10):913-923.
- Kwong JC, et al. Acute Myocardial Infarction after Laboratory-Confirmed Influenza Infection. N Engl J Med. 2018;378(4):345-353.
- Aoki FY, et al. Early administration of oral oseltamivir increases the benefits of influenza treatment. J Antimicrob Chemother. 2003;51(1):123-129.
- 日本感染症学会「インフルエンザ診療ガイドライン」
- 厚生労働省「インフルエンザQ&A」
✍️ この記事を書いた人
(ふるはた つかさ)