当院では、消化器内科の専門医が「血便」の診断と治療にあたっています。痔などの良性疾患から、大腸がんやポリープまで幅広く対応しています

専門医が解説!血便について

消化器専門医・大腸カメラ・迅速診断

当院では、消化器内科の専門医が「血便」の診断と治療にあたっています。痔などの良性疾患から、大腸がんやポリープ、憩室出血や難病指定の炎症性腸疾患まで、出血の原因は多岐にわたり、正確な鑑別が必要です。

「鮮血だから痔だろう」という自己判断は非常に危険です。放置することで病状が進行し、手遅れになるケースもゼロではありません。当院では大腸カメラ等を用いて迅速に出血源を特定し、最適な治療へつなげることを重視しています。

  • 👨‍⚕️ 消化器専門医
  • 🔬 大腸カメラ
  • 迅速診断
  • 🚉 渋谷から一駅

血便と下血の違い

「血便」と「下血」は、どちらも肛門から血液が排出される状態を指しますが、一般的に便の色で区別され、出血している場所を推測する重要な手がかりとなります。

🩸 血便

主に下部消化管からの出血で、肉眼で見て赤い血が便に混じっている状態を指します。出血してから排出されるまでの時間が短いため、肛門に近い大腸や肛門などからの出血が原因であることがほとんどです。

下血(タール便)

主に上部消化管からの出血で、医学的には黒くドロっとしたタール状の便を指します。血液が胃酸によって黒く変化したことが原因で、胃や十二指腸など、上部消化管からの出血が考えられます。

緊急性の高い重篤な症状

以下のような「症状」がある場合、重篤な病気の可能性や緊急の対応が考えられるため、ただちに医療機関を受診してください。

緊急性の高い重篤な症状
  • 😵‍💫 立ちくらみ、失神など、血圧が不安定な状態
  • 🩸 出血が止まらない
  • 👴 高齢の方、重い持病がある方
  • 🌡️ 体重減少、発熱、寝汗などの全身症状
  • 🚽 便が細くなるなどの便通の変化
  • 💉 貧血がある

血便の主な原因

血便の主な原因は、出血している場所や病気の種類によって分けられます。

原因 特徴・症状
憩室出血 大腸の壁にできた小さな袋状のへこみ(憩室)の血管が破れて出血します。通常は痛みを伴わずに突然まとまった量の血便が出ます。
虚血性腸炎 大腸への血流が一時的に悪くなることで炎症が起き、腹痛を伴う血便が出ます。高齢の方や生活習慣病のある方に多いです。
腫瘍 大腸ポリープ大腸がんが便とこすれて出血します。出血量は少ないことが多いですが、最も見逃してはならない重要な原因です。
炎症 O-157などによる「感染性大腸炎」や、国の指定難病である「炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)」などがあります。
50歳未満の方では最も多い血便の原因となります。排便時に痛みを伴う場合(切れ痔)と伴わない場合(いぼ痔)があり、いずれも鮮やかな色の出血が特徴です。
血管の異常 加齢などにより腸の血管がもろくなり出血しやすくなる「血管異形成」や、腹部への放射線治療後に見られる「放射線性直腸炎」などがあります。
治療後の出血 大腸カメラでの組織採取やポリープ切除の後に、数日〜数週間経ってから出血することがあります。

診断までの流れ

問診

問診

症状や既往歴、服用中のお薬(特に血液をサラサラにする薬)などについて詳しくお伺いします。

血液検査

血液検査

貧血の有無や程度、肝臓・腎臓の機能、血液の固まりやすさなどを調べ、全身状態を評価します。

画像検査

画像検査

出血源を特定するための重要な検査です。

大腸カメラ:血便の診断において最も重要で確実な検査です。肛門からカメラを入れ、大腸全体を直接観察し、出血源を特定します。ポリープや早期がんであれば、その場で切除することも可能です。

造影CT:重度の血便がある患者さんには、初期の診断検査として推奨されます。造影剤を注射しながらCT撮影を行うことで、少量の活動性出血でも出血源を同定できることがあります。

出血源の治療と管理

  • 💉
    初期対応

    出血が多い場合は、点滴や輸血で全身状態を安定させることが優先されます。

  • 🔬
    内視鏡による治療

    大腸カメラの際に、クリップで血管を挟んだり、電気で焼いたりして止血処置を行います。ポリープや早期がんの切除も可能です。

  • 🩺
    カテーテル治療

    内視鏡での止血が難しい場合に、出血している血管を塞いで止血します。

  • 🏥
    外科手術

    内視鏡やカテーテル治療で止血できない場合や、進行した大腸がんなどでは、手術が必要になります。

  • 💊
    薬物療法・生活習慣の改善

    痔や炎症性の病気に対しては、お薬での治療や、食事・排便習慣の改善(水分や食物繊維の摂取、温浴など)が中心となります。

⚠️ 重要

血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を服用中の方は、自己中断せず、心臓や脳の病気のリスクとの兼ね合いをみて、医師が継続・中断を慎重に判断しますので、必ずご相談ください。

重症化を防ぐため、早めに受診

早めの受診

血便を「どうせ痔だろう」と自己判断するのは危険です。特に、出血が続いたり繰り返したりする場合は、年齢に関係なく、大腸がん憩室出血などの重大な病気が隠れている可能性も否定できません。

必ず専門医を受診し、大腸内視鏡検査の必要性について相談してください。

参考文献

  1. Sengupta N, Feuerstein JD, Jairath V, et al. Management of Patients With Acute Lower Gastrointestinal Bleeding: An Updated ACG Guideline. Am J Gastroenterol 2023; 118:208.
  2. Oakland K, Chadwick G, East JE, et al. Diagnosis and management of acute lower gastrointestinal bleeding: guidelines from the British Society of Gastroenterology. Gut 2019; 68:776.
  3. Jensen DM, Machicado GA. Diagnosis and treatment of severe hematochezia. The role of urgent colonoscopy after purge. Gastroenterology 1988; 95:1569.
  4. García-Blázquez V, Vicente-Bártulos A, Olavarria-Delgado A, et al. Accuracy of CT angiography in the diagnosis of acute gastrointestinal bleeding: systematic review and meta-analysis. Eur Radiol 2013; 23:1181.

✍️ この記事を書いた人

古畑 司 - 消化器病専門医・内視鏡専門医
古畑 司
(ふるはた つかさ)
保有資格
消化器病専門医 内視鏡専門医 総合内科専門医 肝臓専門医
消化器病専門医、内視鏡専門医に加え、総合内科専門医、肝臓専門医としての知見も活かし、患者さんの腹痛の原因を専門家として「的確に診断・治療」することに尽力しております。