つらい胸焼け、その原因は?食事・ストレス・生活習慣から隠れた病気まで専門医が解説
はじめに:その胸の不快感、「胸焼け」かもしれません
食事の後や横になったとき、胸のあたりがジリジリと焼けるように熱く感じたり、不快感がこみ上げてきたり…。その症状は、多くの人が経験する「胸焼け」かもしれません。 一時的なものであれば心配ないことも多いですが、頻繁に起こる、薬を飲んでも治らないといった場合は、何らかの病気が隠れているサインかもしれません。 この記事では、胸焼けの正体から原因、セルフケア、そして病院で行われる専門的な検査まで、すべての情報を網羅して分かりやすく解説します。
胸焼けってどんな症状?
胸焼けとは、「胸骨(胸の真ん中の骨)の後ろあたりが焼けるように感じる不快な症状」を指します。人によっては「ヒリヒリする」「チリチリする」「熱い感じがこみ上げる」などと表現されます。
「呑酸(どんさん)」との違い
胸焼けと似た症状に「呑酸」があります。これは、胃酸が口や喉まで逆流し、酸っぱい液体や苦い液体がこみ上げてくる感覚のことです。胸焼けと同時に起こることも多く、どちらも胃酸の逆流が主な原因です。
なぜ胸焼けは起こるの?主な5つの原因
①胃酸の逆流メカニズム:
胃の入り口にある筋肉のフタが一時的に緩むことで、胃酸が食道へ逆流します。
②食生活の乱れ
食べ過ぎ、高脂肪食、アルコール、香辛料の多い食事などは、胃酸の分泌を増やしたり、フタを緩みやすくさせたりします。
③生活習慣と姿勢
食後すぐに横になる、前かがみの姿勢を長時間とる、ベルトなどでお腹を強く締め付けるといった行動は、物理的に逆流を誘発します。
④加齢や肥満による体の変化
加齢による筋肉の衰えや、肥満によるお腹の圧力(腹圧)の上昇は、逆流の大きな原因となります。
⑤ストレス
ストレスは食道の知覚を過敏にさせ、わずかな逆流でも強い症状として感じさせてしまうことがあります。
胸焼けが症状として現れる病気
頻繁に起こる胸焼けは、**胃食道逆流症(GERD)**が最も一般的ですが、特に薬が効きにくい場合には他の病気の可能性も考えられます。
胃食道逆流症(GERD)
胃の内容物が逆流することで、不快な症状や食道炎が起きる病気の総称です。GERDは内視鏡検査の結果によって、いくつかのタイプに分けられます。
- 逆流性食道炎(ERD) 内視鏡で、食道粘膜にびらんや潰瘍といった目に見える損傷が確認できる状態です。重症になるほど、夜間の酸逆流が多くなる傾向があります。
- 非びらん性逆流症(NERD) 胸焼けなどの症状があるにもかかわらず、内視鏡では食道粘膜に目に見える損傷が認められない状態です。胸焼けを訴える人の多くがこのタイプと言われています。
術後食道炎:
胃や食道の手術後に、胃液だけでなく胆汁や膵液といった十二指腸液が逆流することで生じる特殊な食道炎です。
好酸球性食道炎:
アレルギー反応が関与するとされる食道炎で、薬が効きにくい胸焼けの原因となります。
食道運動障害:
食道の食べ物を運ぶ動き(蠕動運動)に異常があり、逆流したものが食道に停滞しやすくなっている状態です。
胃排出遅延
胃の動きが悪く、食べ物が長時間胃に留まることで逆流しやすくなっている状態です。
症状が続くときは病院へ。
受診の目安と専門的な検査
症状が改善しない場合は、当院の消化器内科を受診しましょう。病院では、原因を特定するために以下のような検査が行われます。
問診
症状の具体的な内容を詳しく確認します。
受診をおすすめする症状
- 胸焼けが週に2回以上起こる
- 市販薬を飲んでも改善しない
- 飲み込みにくい、食べ物がつかえる感じがする
- 原因不明の体重減少
- 黒い便が出る
内視鏡検査(胃カメラ)
胸焼け症状がある場合、胃カメラをもちいて、食道の粘膜を直接観察し、炎症の有無や程度を確認します。
逆流現象の客観的評価(機能検査)
薬が効かない難治性の症状の場合に、逆流と症状の因果関係を詳しく調べます。
- 24時間食道pHモニタリング: 24時間にわたり、食道内の酸逆流の程度を測定します。
- 食道インピーダンス・pH検査(MII-pH): 酸逆流だけでなく、ガスや**非酸逆流(弱酸性の逆流)**も検出できる最も精密な検査法です。
食道運動の評価(食道内圧検査:マノメトリー):
食道の運動機能に異常がないかを調べる検査をおこないます。
まとめ
胸焼けはありふれた症状ですが、その背景には様々なタイプの病態が存在します。多くは生活習慣の見直しで改善しますが、症状が続く場合は自己判断せず、専門医に相談することが大切です。適切な検査でご自身の状態を正確に把握し、つらい症状から解放され、快適な毎日を取り戻しましょう。
✍️ この記事を書いた人

(ふるはた つかさ)