専門医が解説!便秘について
便秘は、多くの方が経験する非常に一般的な消化器の症状です。単に「便が出ない」だけでなく、生活の質(QOL)を大きく下げ、日々の快適さを損なう原因にもなります。
このページでは、便秘について、病院で行う検査や治療、そして便秘を引き起こす様々な原因を詳しく、分かりやすく解説します。
便秘の「危険なサイン」
ほとんどの便秘は心配のないものですが、まれに他の病気が隠れていることがあります。以下の症状がある場合は、病院でより詳しい検査が必要です。
便秘の原因
便秘の原因は一つではなく、複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。
原発性便秘
はっきりした原因となる病気や薬がない便秘で、主に以下の3タイプに分けられます。
- 腸の動きがスローなタイプ(遅延通過型便秘) 腸の動きが遅く、便が硬くなるタイプ。腸の神経の働きが関係していると考えられています。
- 出口でうまく出せないタイプ(排便障害) 便が直腸まで来ても、出す時に肛門の筋肉が逆に締まってしまうタイプ。いきんでもスッキリせず、指で出す必要があることも。
- 正常通過型便秘 腸の動きに問題はないのに便秘症状があるタイプで、最も多いです。ストレスによる脳と腸の連携の乱れが関係している可能性があります。
二次性便秘
何らかの病気や、服用している薬の副作用として便秘が起こるタイプです。
- 病気によるもの
- 大腸の病気:大腸がんや炎症などで腸が狭くなっている場合。
- 内分泌・代謝の病気:糖尿病、甲状腺機能低下症など。
- 神経の病気:パーキンソン病、脊髄損傷など。
- 薬の副作用:医療用麻薬(オピオイド)、一部の吐き気止め、鉄剤、抗うつ薬、降圧薬(カルシウム拮抗薬)など、日常的に使われる薬が原因となることもあります。
- その他:妊娠もホルモンバランスの変化などから便秘の原因となります。
便秘の検査
血液検査
貧血や、甲状腺機能、糖尿病など、便秘の原因となる全身の病気がないかを確認します。
レントゲン検査
腸内にどれくらい便が溜まっているかを確認したり、治療の効果を判定したりするために撮影することがあります。ただし、レントゲンだけで便秘の診断がつくわけではありません。
CTスキャン
ひどい便秘で腸閉塞(腸の詰まり)が疑われる場合に行います。安全に食事や水分がとれるか、また大腸カメラを安全に行えるかなどを評価する目的もあります。
大腸カメラ
便秘で最も怖い病気は大腸がんです。これを確実に見逃さないために、この検査をすすめます。特に、上記の「危険なサイン」がある方や、45歳以上で一度も検査を受けたことがない方には、大腸がんやポリープなどの病気がないか、直接腸の中を観察することが非常に重要です。
大腸カメラをうけるには?
まず医師との診察でご相談いただき、検査の必要性を判断した上でご予約を承っております。安全な検査のため、お薬のお渡しなどもございますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
ご予約方法
ご都合の良い方法で、事前診察のご予約をお願いいたします。
▼ WEB予約:24時間受付(検査日は別日となります)
▼ お電話でのご予約
お電話でも診察のご予約を承っております。
TEL:03-3424-0705 受付時間: 月~土 8:30~17:30 (日・祝日を除く)
より詳しい検査内容については、▶大腸カメラ(大腸内視鏡検査)のページでもご確認いただけます
治療
大腸がんなど2次性の便秘を除外したうえで、下記のような対応を行います。
ステップ1:基本対策(すべての方へ)
お薬を飲む場合でも、以下の対策は治療の土台として非常に重要です。
- 食物繊維:1日に20~35gを目標に、野菜、果物、きのこ、海藻などを積極的に摂りましょう。急に増やすとお腹が張ることがあるので、少しずつ増やしてください。特にキウイフルーツやプルーンは有効性が報告されています。
🥝 果物:特にプルーンやキウイフルーツがおすすめです。リンゴ、梨なども効果的です。
🥦 野菜:ブロッコリー、ニンジン、豆類など。
🍞 全粒穀物:玄米、オートミール、全粒粉パンなど。
*腸の動きが極端に遅いタイプの便秘(遅延通過型便秘)の方が食物繊維を摂りすぎると、かえって症状が悪化することがあります。 - 水分:1日に1.5リットル以上を目安に、こまめに水分を摂りましょう。
*心臓や腎臓の病気で医師から水分を控えるように言われている方は、必ずその指示に従ってください。 - 運動:ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にしましょう。
- 排便習慣:便意がなくても、毎日決まった時間(特に朝食後が効果的)にトイレに座る習慣をつけます。
- 排便姿勢:トイレで少し前かがみになり、かかとの下に足台を置くなどして「しゃがむ姿勢」に近づけると、直腸がまっすぐになり排便しやすくなります。
ステップ2:お薬による治療
基本対策で改善しない場合、お薬を使います。
- 浸透圧性下剤: 便の水分を増やして柔らかくし、排便を促します。
- 刺激性下剤: 浸透圧性下剤で効果が不十分な場合に、追加で使います。腸を直接刺激して動きを活発にするお薬で、センナが代表的です。長期間使っても安全とされています。
注意が必要な状態
- 便塞栓:硬い便が栓のように詰まってしまった状態です。まず病院で詰まった便を取り除き、その後、再発予防のために毎日お薬を飲んで便を柔らかく保つことが重要です。
- ご高齢の方:心臓や腎臓の持病がある場合、使用する下剤の種類に注意が必要です。特に、市販のリン酸ナトリウム浣腸は重い副作用のリスクがあるため、自己判断での使用は避けてください。
つらい症状を一人で抱え込まず、いつでもお気軽に私たちにご相談ください。