専門医が解説!貧血について
専門医が解説!貧血について
消化器内科専門医による貧血の診断と治療
「疲れやすい」「めまいがする」といった症状、もしかしたら貧血が原因かもしれません。
貧血とは何か、なぜ起こるのか、そしてどのように治療していくのかを分かりやすく解説します。特に消化管からの出血が原因の貧血は、胃がんや大腸がんなど重大な病気が隠れている可能性があり、早期の検査が重要です。
気になる症状があれば、池尻大橋から徒歩3分、渋谷から一駅の当院へお気軽にご相談ください。
- 貧血の原因を特定
- 血液検査・内視鏡
- 鉄剤・点滴治療
- 消化器専門医が担当
🩸 貧血とは?
貧血の定義
貧血とは、血液中の「酸素を運ぶトラック」であるヘモグロビン(血色素)の濃度が低下し、その結果、体が必要とする酸素を十分に供給できなくなった状態を指します。ヘモグロビンは赤血球の中にあるタンパク質で、酸素と結合して全身の細胞や組織に酸素を届け、生命活動を支える非常に重要な役割を担っています。
貧血の基準値
WHO基準では、血液中のヘモグロビン濃度が以下の値を下回ると貧血と診断されます。
※年齢・妊娠の有無などにより基準値は異なる場合があります。
🩺 貧血のサイン
🚨 危険なサイン
以下の症状がある場合は、すみやかに医療機関を受診してください。
- 意識がぼんやりする、失神する
- 安静にしていても息切れ・動悸がする
- 胸の痛みがある
- 黒い便や血便が出る
- 急激な体重減少がある
🔍 貧血の原因
🩸 鉄分の不足
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食事からの不足 — 菜食主義の方はヘム鉄が不足しやすい
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吸収不良 — 胃の手術後・腸疾患・ピロリ菌・自己免疫性胃炎など
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出血による喪失 — 最も多い原因。過多月経・胃潰瘍・大腸ポリープ・大腸がんなど
🚨 貧血の裏に「がん」が隠れていることがあります
男性や閉経後の女性の貧血は、胃がん・大腸がんなどの消化管出血が原因のことがあります。健診の便潜血検査だけでは見逃すこともあるため、胃カメラ・大腸カメラでの確認をおすすめします。
📋 その他の原因
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ビタミン不足 — B12・葉酸などが不足すると大球性貧血に
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慢性疾患の影響 — がん・腎臓病・リウマチなどで鉄が利用できなくなる
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骨髄の病気 — 骨髄異形成症候群・再生不良性貧血・白血病など
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その他 — 溶血性貧血・薬の副作用・大量出血・飲酒過多など
🩺 診療の流れ
👨⚕️ 問診・診察
症状の経過(だるさ・めまい・息切れなど)、食事内容、月経の状況、既往歴などを詳しく伺います。
🩸 血液検査
ヘモグロビン値や鉄分の貯蔵量(フェリチン)を測定し、貧血の有無・種類・重症度を判定します。
🔬 原因の精密検査
消化管出血が疑われる場合は、胃カメラ・大腸カメラで直接確認します。必要に応じてCT検査も行います。
💊 治療
鉄剤の内服や点滴で鉄分を補充します。出血や吸収障害など根本原因がある場合は、その治療も並行して行います。
📊 経過観察
定期的な血液検査で改善を確認します。体内の鉄分貯蔵が十分に回復するまで、半年ほどフォローします。
🔬 検査と診断
貧血の裏には治療が必要な病気が隠れていることがあります。特に男性や閉経後の女性は、消化管からの出血がないか詳しく調べることが重要です。
🩸 血液検査
- 貧血の有無・程度・タイプ(赤血球の大きさ)を判定します
- 体内の鉄分の貯蔵量(フェリチン)を測定します
- 必要に応じてビタミンB12・葉酸なども検査します
🖥️ CT検査
内視鏡で出血の原因が特定できない場合や、他の臓器からの出血が疑われる場合に行います。体の断面を撮影し、内視鏡では見えない場所の腫瘍などを確認します。
🔍 内視鏡検査
鉄欠乏の原因が出血と考えられる場合、特に男性や閉経後の女性では消化管のがんが隠れている可能性があります。胃カメラ・大腸カメラで食道・胃・十二指腸・大腸を直接観察し、出血の原因を探します。
💊 治療
貧血の治療は原因の特定と、それに応じた治療が基本です。症状がなくても放置すると心臓への負担や臓器のダメージにつながるため、早めの対応が大切です。
⏱️ 効果の目安
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氷食症 — 治療開始後すぐに改善
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だるさ — 数日以内に改善
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ヘモグロビン値 — 1〜2週で上昇、6〜8週で正常化
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貯蔵鉄の回復 — 約半年かかることも
💉 鉄分の補充
鉄欠乏性貧血の治療は、不足した鉄分を補給することが基本です。
💊 飲み薬(内服薬)
手軽で安全性が高く、多くの方に推奨される基本の治療法です。
- ビタミンCと一緒に摂ると吸収UP
- コーヒー・紅茶・乳製品・卵とは時間を空ける
- 胃酸を抑える薬とは2時間以上空ける
⚠️ 副作用について
吐き気・便秘・下痢・腹部不快感などの胃腸症状や、便が黒くなることがあります。
隔日服用で副作用が軽減される場合があります。便秘には緩下剤が役立ちます。
💉 注射・点滴
飲み薬が合わない場合や、吸収が悪い場合、早急な補給が必要な場合に行います。出血が続く方、腸・腎臓の病気がある方、胃の手術後の方、妊娠後期の方などに推奨されます。
🩸 輸血について
輸血は基本的な治療法ではなく、貧血が極めて重く命に関わる緊急時にのみ行われます。
🍽️ 生活のヒント
鉄分不足を食事だけで改善するのは難しいですが、治療の補助として食事を意識することは大切です。
鉄分が豊富な食品
- ビタミンCは鉄の吸収を助ける
- 紅茶・コーヒー・乳製品は食事と時間を空ける
📋 定期チェック
治療後も定期的な血液検査で貧血の再発がないか確認することが大切です。
🩺 早めのご相談を
月経のある女性、妊娠中の方、成長期のお子さん、ご高齢の方のほか、アスリートや菜食主義の方、定期的に献血をされる方、胃の手術を受けた方などは、貧血になりやすい傾向があります。
また、貧血の背景に胃がんや大腸がんなど深刻な病気が隠れていることもあります。気になる症状があれば、一人で悩まず、いつでも当院にご相談ください。
❓ よくあるご質問
いいえ。症状がなくても放置すると心臓への負担や臓器へのダメージにつながる危険があります。また、貧血の裏に胃がんや大腸がんなど深刻な病気が隠れていることもあるため、早めの検査・治療が大切です。
はい、受診をお勧めします。貧血は徐々に進行するため体が慣れてしまい、自覚症状がないことも少なくありません。数値の異常は体からのサインですので、原因を調べることが大切です。
特に男性や閉経後の女性の鉄欠乏性貧血は、胃がんや大腸がんなど消化管からの出血が原因のことがあります。便潜血検査だけでは見逃す場合もあるため、内視鏡で直接確認することが重要です。
ヘモグロビン値が正常に戻っても、体内の鉄分の貯金(貯蔵鉄)が十分に回復するまで服用を続ける必要があります。一般的には半年ほどかかることもあります。自己判断で中止せず、医師の指示に従ってください。
吐き気や便秘などの胃腸症状は、鉄剤の代表的な副作用です。隔日服用に変更したり、注射・点滴による鉄分補充に切り替える方法もあります。我慢せずご相談ください。
すでに鉄分が不足している状態を食事だけで改善するのは難しいため、まずは鉄剤による治療が必要です。食事はあくまで治療の補助として、鉄分の豊富な食品(レバー・赤身肉・魚介類など)を意識的に摂るようにしましょう。
サプリメントに含まれる鉄分量は処方薬と比べて少なく、貧血の改善には不十分なことが多いです。まずは医療機関で正確な診断を受け、適切な量の鉄剤を処方してもらうことをお勧めします。
参考文献
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- Pasricha SR et al. Iron deficiency. Lancet. 2021;397(10270):233-248.
✍️ この記事を書いた人
古畑 司(ふるはた つかさ)
保有資格