【専門医が解説】急性胃腸炎の症状・原因・治し方|病院へ行くべき目安は?

急性胃腸炎

専門医による診断・適切な対症療法・脱水予防

「急にお腹が痛くなり、下痢が止まらない」「吐き気が強くて水分も摂れない」…それは、ウイルスや細菌による「急性胃腸炎」の可能性があります。

いわゆる「お腹の風邪」と呼ばれるノロウイルスなどのウイルス性が大半ですが、カンピロバクターやサルモネラなどの細菌性(食中毒)の場合もあります。当院では、脱水の評価や原因の特定を迅速に行い、整腸剤の処方や点滴、食事指導など、辛い症状を和らげ早期回復を目指す治療をご提供いたします。

  • 💊 下痢・嘔吐
  • 💧 脱水予防・点滴
  • 🔬 原因菌の診断
  • 🍽️ 入院加療

🦠 急性胃腸炎とは?

急性胃腸炎の説明イメージ

ウイルスや細菌が胃や腸に入り込み、炎症を起こす病気です。原因のほとんどはウイルス(ノロウイルスやロタウイルスなど)ですが、症状が長引く場合は細菌(食中毒)の可能性もあります。

主な症状は、突然の吐き気、嘔吐、下痢、腹痛です。これらの症状は、通常1日〜3日で自然によくなりますが、長い場合でも1週間程度で治まります。また、38度台の熱が出ることもあれば、出ない場合もあります。

ほとんどの場合はご自宅での対処で自然に回復します。

🚽 水様下痢
🤢 嘔気・嘔吐
腹痛
🤒 発熱

🔄 どうやってうつる?

ウイルスや細菌は、主に以下のような経路で口から体内に入り込みます。

  • 🍽️
    食中毒 汚染された食べ物(生牡蠣、加熱不足の肉など)や水を口にする。
  • 🤲
    接触感染 感染した人の便や嘔吐物に含まれるウイルスが、手やドアノブ等を介して口に入る。
  • 🏠
    家庭内感染 感染した人が調理した食事を食べたり、タオルを共有したりすることで感染する。

📋 主な原因と特徴

原因によって、食べてから症状が出るまでの時間(潜伏期間)や特徴が異なります。

🧫 ウイルス性(お腹の風邪)

多くは数日で自然回復 — 水分補給と安静が治療の基本です。

ノロウイルス

冬に流行。感染力が非常に強く、アルコール消毒が効きにくい。

潜伏期間:1〜2日

ロタウイルス

乳幼児に多いが大人も感染する。白色の便が出ることがある。

潜伏期間:2〜4日

🔬 細菌性(食中毒)

症状が重い場合は抗生物質が必要 — 血便や高熱がある場合は早めに受診してください。

カンピロバクター

加熱不足の鶏肉などが主な原因。

潜伏期間:2〜5日(食べてから忘れた頃に発症しやすい)

サルモネラ

卵、肉類などが原因。高熱が出やすい。

潜伏期間:半日〜2日

腸管出血性大腸菌(O157など)

激しい腹痛と血便が出るのが特徴。重症化しやすい。

潜伏期間:3〜5日

🚨 危険なサイン

以下のような症状がある場合、または該当する方は、重症化のリスクがあるため早めの受診をお勧めします。

  • 🌡️ 38.5℃以上の高い熱が続いている
  • 📅 症状が2日以上続いている
  • 💧 水分を受け付けず、のどが乾く
  • 😰 ぐったりする
  • 🤕 我慢できない腹痛がある
  • 🩸 血便を認める
  • 👴 70歳以上の方
  • 💊 糖尿病、心臓病、腎臓病の方
📅

予約方法

消化器内科の予約方法

電話予約

03-3424-0705

受付:月~土 8:30~17:30

🏥 診療の流れ

「いつもの胃腸炎だろう」と思っていても、その症状の裏には腸閉塞や虫垂炎といった、緊急性の高い病気が隠れていることがあります。自己判断で様子を見ているうちに重症化してしまうのを防ぐため、当院では丁寧な診察と必要な検査を行い、原因を正確に診断した上で、最適な治療へとつなげます。

STEP 1

👨‍⚕️ 診察

問診や触診などの診察から症状を把握し、脱水の程度や全身状態を確認します。

STEP 2

🔬 検査

必要に応じて血液検査や便検査、画像検査を行い、炎症の有無や原因を確認します。

STEP 3

📋 診断

検査結果と臨床症状をもとに、胃腸炎のタイプ(ウイルス性か細菌性か)や重症度を判断します。

STEP 4

💊 治療

重症度に応じて、内服薬での自宅療養か、点滴や入院治療が必要かを判断し、治療を開始します。

🔍 検査と診断

検査と診断

吐き気・嘔吐・下痢の原因を特定し、適切な治療につなげるために、症状に応じたさまざまな検査を行います。

👨‍⚕️ 問診・身体診察

医師が下痢の性状(回数、色、血便の有無など)や随伴症状(腹痛、発熱、嘔吐)、食事歴、海外渡航歴、服用中の薬について詳しく質問します。お腹の触診で痛む場所や張り具合を確認し、脱水の兆候(皮膚の乾燥など)も診察します。

🩸 血液検査

炎症反応(CRP)や白血球数で感染や炎症の程度を評価します。また、下痢による脱水の影響(電解質異常、腎機能など)や、栄養状態(アルブミンなど)も確認します。

💩 便検査

  • 便培養検査: 細菌性食中毒の原因菌(サルモネラ、カンピロバクター、病原性大腸菌など)を特定します。
  • 抗原検査・毒素検査: 必要に応じて、ノロウイルスなどのウイルス抗原や、クロストリディオイデス・ディフィシルの毒素を調べます。
  • 便潜血検査: 目に見えない出血がないかを確認します(主に慢性下痢症や大腸がん検診で実施)。

📷 レントゲン検査

腹痛が強い場合や腹部膨満感がある場合に、腸閉塞(イレウス)の兆候である腸管内のガスの溜まり具合などを確認します。

🔬 腹部超音波・CT検査

下痢に加え、激しい腹痛や発熱がある場合に行います。腸管の壁が厚くなっていないか(炎症の程度)、膿が溜まっていないか(膿瘍)、憩室炎や虫垂炎などの他の病気がないかを詳しく調べます。

🔍 胃カメラ・大腸カメラ

「薬を飲んでも症状が良くならない」「血便や吐血がある」、あるいは「CT検査で胃壁や大腸壁の肥厚(腫れ)が確認された」といった場合に、より詳しい原因を調べるために行います。

💊 治療について

体力を回復させるため、無理に動かずゆっくり休むことが大切です。大部分の方は、症状を和らげながら自然に回復するのを待つことが治療の基本になります。

💧 水分補給が最も大切です

下痢や嘔吐は、体から水分と塩分(電解質)を失わせ、脱水症状を引き起こす可能性があります。脱水を防ぐために、1.5L前後を目標にこまめな水分補給を心がけてください。

  • おすすめの飲み物: 経口補水液(OS-1など。薬局で購入できます)、スポーツドリンク、麦茶、白湯、スープなど
  • 避けたほうがよい飲み物: オレンジジュースなどの果汁飲料や炭酸飲料は、糖分が多すぎて下痢を悪化させることがあります。

🥣 食事は無理をせずに

食欲がない時は無理に食べる必要はありません。水分補給を優先してください。食べられそうであれば、消化しやすいものから少しずつ試してみましょう。

  • おすすめの食べ物: おかゆ、うどん、スープ、バナナ、塩味のクラッカー、茹でたジャガイモや野菜など
  • 避けるべきもの: 脂っこい食事(揚げ物など)、辛いもの、アルコール、カフェインなどは胃腸への刺激が強いため控えましょう。

💊 処方薬について

🚫 下痢止め

自己判断で市販の下痢止めを使うのは注意が必要です。ウイルスなどを体外に排出するのを妨げ、かえって回復を遅らせることがあるためです。

ただし、下痢がひどく脱水が心配される状況で、熱や血便がない場合に限り、医師が処方することがあります。必ず医師の指示に従って使用してください。

🤢 吐き気止め

嘔吐がひどく、水分補給が難しい場合は、吐き気止めが処方されることがあります。

💉 抗生物質(抗菌薬)

いわゆる「おなかの風邪」の原因はほとんどがウイルスなので、細菌を殺すための抗生物質は効果がなく、通常は使用しません。副作用のリスクのほうが大きくなる可能性があります。

ただし、高熱が続く、便に血が混じる、下痢が2日以上続くなど、細菌感染が強く疑われる重い症状の場合には、医師の判断で処方されることがあります。

🦠 整腸剤(プロバイオティクス)など

下痢によって乱れた腸内環境を整え、回復を助けるために使用します。劇的な特効薬ではありませんが、下痢の期間を短縮したり、症状を緩和したりする効果が期待できます。副作用がほとんどないため、補助的な治療として処方することが一般的です。

🍑 お尻のトラブル対策

頻繁な下痢が続くと、肛門周辺がただれて痛みが出ることがあります。トイレットペーパーで強くこすらず、温水洗浄便座(弱めの水流)を使ったり、優しく押し拭きしたりしてケアしましょう。ワセリンなどを塗って保護するのも有効です。

🛡️ 予防と家庭内感染対策

予防と家庭内感染対策

急性胃腸炎は「うつる」病気です。特にノロウイルスは感染力が非常に強く、アルコール消毒が効きにくいため、ご家庭での正しい対策が重要です。

🧼 手洗いの徹底(最も効果的)

ウイルスや細菌は、手についたものを口にすることで感染します。石鹸と流水でウイルスを物理的に洗い流すことが重要です。

  • タイミング: トイレの後、おむつ交換の後、調理の前、食事の前、帰宅時。
  • 方法: 石鹸をよく泡立て、手のひら、手の甲、指の間、爪の間、手首まで30秒以上かけて丁寧に洗います。

🧴 消毒について

ノロウイルスにはアルコール消毒があまり効きません。汚染された場所や物の消毒には「次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)」が有効です。

🍳 食中毒の予防

  • 十分な加熱: 肉や魚は中心部まで火を通します(目安:75℃で1分以上)。
  • 交差汚染の防止: 生肉を扱ったまな板や包丁は、使用後すぐに熱湯や漂白剤で消毒し、他の食材(サラダなど)に菌がつかないようにします。
  • 保存: 調理後の食品は室温に放置せず、速やかに冷蔵庫(10℃以下)で保存します。

🏠 家庭内での過ごし方

  • トイレ: 汚染されたしぶきが飛ばないよう、蓋を閉めてから水を流します。
  • タオル: 共用は避け、ペーパータオルや個人専用のものを使います。
  • お風呂: 下痢をしている人は最後に入浴するか、シャワーのみにします(湯船のお湯を介して感染することがあります)。残り湯は洗濯に使わず捨てましょう。

💡 重症化を防ぐために

古畑病院 外観

急性胃腸炎は、主にノロウイルスなどのウイルス感染が原因です。主な症状は突然の下痢、嘔吐、腹痛、発熱で、通常1〜3日で回復します。

治療の基本は十分な水分補給と安静です。自己判断での下痢止めの使用は回復を遅らせる可能性があるため注意しましょう。

水分が摂れないほどの強い脱水、我慢できない腹痛、高熱や血便、下痢が2日以上、長引くなど辛いとき、特に高齢者や持病のある方、妊婦は、我慢せずにはやめに医療機関を受診してください。

❓よくあるご質問

📋 感染・リスク・予防期間

A

手洗いの徹底が基本です。タオルや食器の共用は避けましょう。入浴は患者さんが最後にし、トイレの後は蓋をしてから流すようにしてください。

A

症状が治まっても、最低1週間〜1ヶ月程度は続けてください。

下痢や嘔吐が止まって元気になっても、ウイルスや細菌は体内に残り、便の中に排出され続けています。特にノロウイルスは、症状消失後も1週間〜1ヶ月程度、便中に排出されることが知られています。

家庭内: 症状消失後も最低1週間は、トイレ後の手洗い・消毒を徹底し、タオルの共用は避けましょう。

仕事: 食品を扱う方や医療・介護従事者は、職場の規定(検便で陰性確認など)に従ってください。

A

一般的なアルコール消毒薬はノロウイルスには効果が薄いです。石鹸による流水手洗いが最も有効です。環境消毒には次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)を使用します。

💊 治療・食事

A

自己判断での服用は避けてください。ウイルスや細菌を体外に排出する反応を止めてしまい、症状が悪化する可能性があります。医師の指示に従ってください。

A

無理に食べる必要はありません。まずは水分と塩分の補給(経口補水液など)を最優先してください。固形物は食欲が出てからで大丈夫です。

A

多くの感染性腸炎(特にウイルス性)には抗生物質は無効であり、かえって腸内細菌のバランスを崩すことがあります。細菌性で症状が重い場合など、医師が必要と判断した場合のみ処方します。

A

下痢や嘔吐などの症状が治まり、普段通りの食事が摂れるようになれば可能です。

ただし、調理従事者や医療・介護職の方は、完全に排菌するまで(検便で陰性確認など)就業制限が必要な場合があります。職場の方針も確認してください。

📚 参考文献

  • JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―腸管感染症―
  • 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
  • 日本消化器病学会「急性胃腸炎」関連資料
  • Ahmed SM, et al. Lancet Infect Dis. 2014;14(8):725-30.
  • Riddle MS, et al. Am J Gastroenterol. 2016;111(5):602-22.
  • Bresee JS, Marcus R, Venezia RA, et al. The etiology of severe acute gastroenteritis among adults visiting emergency departments in the United States. J Infect Dis 2012; 205:1374.
  • Shane AL, Mody RK, Crump JA, et al. 2017 Infectious Diseases Society of America Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Infectious Diarrhea. Clin Infect Dis 2017; 65:e45.
  • Thielman NM, Guerrant RL. Clinical practice. Acute infectious diarrhea. N Engl J Med 2004; 350:38.
  • Jones R, Rubin G. Acute diarrhoea in adults. BMJ 2009; 338:b1877.
  • Rao SS, Summers RW, Rao GR, et al. Oral rehydration for viral gastroenteritis in adults: a randomized, controlled trial of 3 solutions. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2006; 30:433.

✍️ この記事を書いた人

古畑 司 - 消化器病専門医・内視鏡専門医
古畑 司
(ふるはた つかさ)
保有資格
消化器病専門医 内視鏡専門医 総合内科専門医 肝臓専門医
消化器病専門医、内視鏡専門医に加え、総合内科専門医、肝臓専門医としての知見も活かし、患者さんの腹痛の原因を専門家として「的確に診断・治療」することに尽力しております。