専門医が解説!腹痛について
はじめに
おなかの痛みは、腸が過剰に動いたり、臓器に炎症を起こしたりした際に、その異常を知らせるために体が発する重要なサインです。
腹痛はなぜおこる?
お腹の中には、痛みを感じるためのセンサーが張り巡らされています。このセンサーが、臓器が強く引き伸ばされたり、炎症によって発生する特定の物質で刺激されたりすると、その信号が脳に伝わって「痛み」として認識されます。
例えば、胃は普段とても丈夫ですが、ひとたび胃炎などで炎症を起こすと、普段なら何でもないような食べ物や胃酸の刺激でも、強く痛みを感じるようになります。
また、お腹の痛みが厄介なのは、痛む場所がはっきりとせず、「このあたり全体が痛い」と感じやすいことです。これは、痛みを伝える神経の仕組みによるものです。さらに、胆石が原因で右肩が痛むように、問題のある場所から離れたところが痛む「関連痛」という現象もあります。
このため、お医者さんは痛む場所だけでなく、痛みの種類や他の症状を詳しくお伺いし、原因を慎重に探っていくのです。
こんな時はすぐに受診を
以下の症状がある場合は、我慢せずに速やかに当院のようにCTのある医療機関を受診してください
- 歩くとお腹が響く
- 少しおなかをさわたっただけで、飛び跳ねるぐらい痛い。
- これまでに経験したことのないような激しい痛み
- 冷や汗を伴う、顔面蒼白になるほどの痛み
- 37.5度以上の発熱
- 意識が遠のき、ぐったりして動けない
- お腹が板のように硬く、張っている
- 頻繁に吐き続ける
- 血を吐いた
- 血便がでた
- 黒色便がでた。
こんな方はとくに注意が必要です。
- 妊娠中の方:通常とは異なる原因も考えられるため、早めにかかりつけ医にご相談ください。
- 手術後の方:手術に関連した合併症の可能性も考慮します。
- ご高齢の方:症状がはっきりと出にく、診断が遅れると重症化しやすいため注意が必要です。
- 持病をお持ちの方(糖尿病、肝臓病、腎臓病、免疫を抑える薬を飲んでいる方など):感染症などが重症化しやすいため、早めの受診が大切です。
お腹の痛みの場所から考えられる主な原因
痛む場所は、原因を特定するための重要な手がかりになります。
- 右上(右の肋骨の下あたり)の痛み
- 胆のうの病気(胆石、胆のう炎など)
- 肝臓の病気(肝炎など)
- みぞおち(お腹の真ん中上部)の痛み
- 胃や十二指腸の病気(胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎など)
- すい臓の病気(膵炎など)
- 心臓の病気(心筋梗塞など)が原因のこともあり注意が必要です。
- 左上(左の肋骨の下あたり)の痛み
- すい臓の病気(膵炎など)
- 脾臓の病気
- 下腹部の痛み
- 虫垂炎(いわゆる盲腸、多くは右下腹部)
- 腸の病気(憩室炎、感染性腸炎など)
- 尿路の病気(腎結石、膀胱炎など)
- 女性特有の病気:子宮や卵巣の病気(子宮外妊娠、卵巣のう腫、骨盤内炎症性疾患など)
- お腹全体が痛い、または場所がはっきりしない痛み
- ウイルスや細菌による胃腸炎、食中毒
- 腸の動きの問題(腸閉塞、過敏性腸症候群など)
- 便秘
診断のために病院で行われること
医師による診察(問診・身体診察)

- いつから、どこが、どのように痛むか、他に症状はないかなど、詳しくお話を伺います。
- お腹を触り、痛みの程度を確認します
腹痛の検査
おわりに
お腹の痛みは、誰もが経験するありふれた症状ですが、その背景には様々な原因が隠されています。軽い食あたりや便秘から、一刻を争う病気まで、その範囲は非常に広いのが特徴です。大切なのは、「いつもの痛みと違う」「我慢できないほどの激しい痛み」など、ご自身の体のサインを見逃さないことです。この資料を参考に、気になる症状があれば自己判断で済ませず、お気軽に当院にご相談ください。早期発見・早期治療が、健やかな毎日を守るための最も重要な鍵となります。