大腸ポリープとは?原因・検査・がん予防について医師が解説

 「大腸ポリープ」と聞くと、すぐにがんを心配されるかもしれませんが、まずは落ち着いてその正体を知ることが大切です。ポリープは、成人の3~5人に1人が持つと言われるほど身近な大腸の「できもの」で、その多くはがんになる心配のない「おとなしいタイプ」です。しかし、一部には時間をかけてがん化する「注意が必要なタイプ」も存在します。幸い、がんになるまでには平均で10年ほどの猶予があるため、慌てる必要はありません。では、どうすればそのリスクを正しく管理し、将来のがんを防ぐことができるのでしょうか。この記事では、ポリープの様々な原因から、ご自身がいつ検査を始めるべきか、そして最新の治療法まで、専門医が分かりやすく解説します。

大腸ポリープの主な原因

  1. 生活習慣病
    1. 高脂肪食
       高カロリー摂取や肥満が大腸がんのリスクを高めることが多くの研究で報告されており、高脂肪食も同様にポリープの発生リスクとの関連が示されています。
    2. 赤身肉や加工肉の多い食事
       これらの食品の摂取が大腸がんのリスク要因として報告されています。
    3. 食物繊維が少ない食事
       食物繊維や野菜、果物の摂取は大腸がんの発生を抑制する効果があると報告されているため、その逆である食物繊維の少ない食事はリスクを高める可能性があります。
  2. 喫煙
     喫煙も大腸がんのリスクを高める要因の一つとされています。
  3. 肥満
     体格指数(BMI)の増加が大腸腺腫(ポリープの一種)の発生率上昇と関連していることが報告されています。
  4. 過度のアルコール摂取
     大量のアルコール摂取は大腸がんのリスクを高める要因とされており、大腸がんの多くがポリープから発生することを考えると、ポリープの発生や進行にも間接的に影響する可能性が示唆されます。
  5. 加齢
     年齢が上がるにつれて細胞の遺伝子に異常が蓄積しやすくなるため、大腸ポリープや大腸がんのリスクは高まります。実際に、大腸ポリープや大腸がんは40歳未満ではまれで、約90%が50歳以降に発生します。がんになる可能性のある腺腫が見つかる割合も、50歳で約25〜30%ですが、70歳までには50%に達することもあります。また、男性は女性よりもポリープができやすい傾向があります。
  1. 遺伝的要因と家族歴
     大腸ポリープや大腸がんは、家族の中で発生する傾向があり、遺伝的な要因が大きく関わっていると考えられています。
  2. 家族に大腸がんやポリープの患者さんがいる場合(遺伝性の病気ではない場合)
     ご両親、兄弟姉妹、お子さんなどの近親者に大腸がんやポリープの既往がある場合、ご本人の発症リスクも高まります。これは、特定の遺伝子の変異だけでなく、家族内で共通する遺伝的背景や生活習慣が影響するためです。特に、複数の近親者に既往がある場合や、50歳未満で診断された方がいる場合は、リスクがより高くなります。
  3. 遺伝性
    • 家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)
       大腸全体に数百から数千ものポリープができ、ほとんど全ての患者さんが50歳未満で大腸がんを発症します。
    • リンチ症候群
       ポリープが大腸がんに進行しやすく、比較的若い年齢(通常30代〜40代)でがんを発症することが特徴です。これはDNAの傷を修復する遺伝子の異常が原因です。
  4. その他の要因
    • 炎症性腸疾患(IBD)
       潰瘍性大腸炎やクローン病など、大腸に慢性的な炎症を起こす病気がある方は、大腸がんのリスクが高まります。これは、長期間の炎症によって粘膜の細胞が変異を起こしやすくなり、「異形成(dysplasia)」という前がん状態を経て、がんに至る過程が考えられているためです。
    • 過去に大腸がんや前がん性のポリープが見つかったことがある方
       これらの既往がある方は、もともとポリープやがんができやすい体質である可能性が高く、時間が経つにつれて別の部位に新たなポリープやがんが発生するリスクがあるため注意が必要です。

ポリープの種類

🔬 便潜血検査と大腸カメラの比較

大腸がんの早期発見には、適切な検査を選ぶことが大切です。
2つの代表的な検査方法の特徴を詳しく比較します。

比較項目 便潜血検査 大腸カメラ
📋 どんな検査? 自宅で便を採取し、目に見えない血液が混じっていないかを調べます
詳しく見る
お尻から細いカメラを入れ、大腸の内部を直接すみずみまで観察します
詳しく見る
📅 頻度の目安 年に 1回 5年に 1回
(異常がなければ)
良いところ
• 自宅でできる
• 体への負担がない
• 費用が安い
• 最も精度が高い
• ポリープを見つけたら、その場で切除できる
⚠️ 注意するところ
• ポリープや早期がんがあっても 10% は陰性になることがある
• 「陽性」の場合は、必ず大腸カメラが必要
• 検査前に下剤を飲む必要がある
• ごくまれに合併症のリスクがある

⚠️ 重要なお知らせ

便潜血検査で「陽性」と判定された方は、必ず大腸カメラ検査を受けてください。
便潜血検査はあくまでスクリーニング検査です。陽性の場合、大腸カメラで精密検査を行うことが非常に重要です。

大腸カメラはどんなときに受けるべき? – 古畑病院

大腸カメラはどんなときに受けるべき?

もし大腸ポリープが見つかったら?

 大腸カメラでポリープが見つかった場合、サイズが10mm以下であれば、その場で切除が可能です。10mm以上の大きさの場合は、入院での治療をすすめています。
 通常、痛みは感じません。切除したポリープは、詳しく検査して「顔つき(組織型)」を調べます。その結果によって、今後の「監視(サーベイランス)」計画が決まります。

 以下に内視鏡治療の方法を動画で紹介します。

内視鏡的粘膜切除術

内視鏡的粘膜下層剥離術

大腸カメラをうけるには?

ポリープの有無は、診察だけでは分かりません。まずは、検査が必要かどうかのご相談から承ります。お気軽にご予約ください。

当院では、患者様が安心して検査を受けられるよう、様々な配慮をしております。まずは医師との診察で、検査の必要性を判断し、下剤の選び方や鎮静剤の使用など、ご不安な点についてお話しします。

事前の診察で、患者様一人ひとりに合わせた安全な検査計画を立てることで、ご負担を最小限に抑え、快適に検査を受けていただけるよう努めています。

▼ お電話でのご予約

 TEL:03-3424-0705 受付時間: 月~土 8:30~17:30 (日・祝日を除く)

まとめ - 未来の健康への第一歩を踏み出しましょう

 大腸カメラを行い良性ポリープのうちに内視鏡治療を行うことは、大腸がんの予防につながるため、未来の自分と、あなたを大切に思う家族への最高の贈り物です。
 症状がないから大丈夫、と先延ばしにせず、45歳を過ぎたら、まずは当院の医師に相談することから始めてみませんか。その一歩が、あなたの健康な未来を守るための、最も確実な方法です。

参考文献

  1. Heitman SJ, Ronksley PE, Hilsden RJ, et al. Prevalence of adenomas and colorectal cancer in average risk individuals: a systematic review and meta-analysis. Clin Gastroenterol Hepatol 2009; 7:1272.
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✍️ この記事を書いた人

古畑 司 - 消化器病専門医・内視鏡専門医
古畑 司
(ふるはた つかさ)
保有資格
消化器病専門医 内視鏡専門医 総合内科専門医 肝臓専門医
消化器病専門医、内視鏡専門医に加え、総合内科専門医、肝臓専門医としての知見も活かし、患者さんの腹痛の原因を専門家として「的確に診断・治療」することに尽力しております。

 
検診を始める前に、ご自身のリスクを知ることが大切です。以下の質問に「はい」がつくかチェックしてみましょう。

  1. これまでに大腸がんやポリープ(腺腫)と診断されたことがある
  2. 血のつながったご家族(親、兄弟姉妹、子)に大腸がん、または進行したポリープ(1cm以上の腺腫など)と診断された人がいる
  3. 潰瘍性大腸炎やクローン病と診断されている
  4. ご家族に、大腸がんになりやすい特殊な遺伝性の病気の方がいる
     もし一つでも「はい」がついた方は、平均よりリスクが高い可能性があります。 必ず医師に伝え、ご自身に合った検診の開始時期や方法を相談しましょう。